【 時間 】 2010.2

 年長さんはもうすぐ卒園の時を迎えます。この1~3年の幼稚園生活の中で、一体子どもたちはどのような「時間」を過ごし、何を得てきたのでしょう。それは、決して消えることの無い事実の積み重ねとして、一人一人の心の中に永遠に刻まれていくことでしょう。

うれしいこと、楽しいこと、仲間との充実した遊びは、心の中にすんなりと良い記憶として入ってきます。しかし、つらい出来事、悩み事、強いショックを受けた時などは、その出来事を何回も何回も思い出し、後悔を繰り返すけれども、起こってしまった事はもう変えることはできないという事実に突き当たります。そんな、自分ではどうすることも出来ない苦しみを少しずつ包み込み、心を優しく癒してくれるもの、それが「時間」ではないかと思います。

私たちが、自分自身の力ではどうしても乗り越えることが出来ない苦しみを「時間」は少しずつ少しずつやわらげてくれます。そして、長い「時間」を経て、その苦しみは結果として自分自身を成長させてくれた事に、後になって気付きます。苦しさに向き合うことや悩み抜くことが人間を成長させてくれます。でも、そのことに気付くためには多くの「時間」が必要なのです。

もし、今、つらいこと苦しいことに直面していたとしても「これは自分自身を成長させてくれるために必要な出来事なんだ」と前向きに受け入れることができるなら、どんなに素晴らしいことでしょう。そればかりか、これから先に起こるであろう災難や苦行に対しても、全てを受け入れる心の準備ができているとしたら、それは「悟り」に近いとも言えるでしょう。つまり、つらい出来事を受け入れるまでの「時間」の長さは、人それぞれ違う、ということです。

それは、子どもも同じだと思います。うれしいことも悲しいことも、すんなりと受け入れていける子もいれば、何日も何日も自分の中で、悩みぬいている子もいると思います。そんな時、その子の気持ちに気付き、その子の心にそっと寄り添っていることのできる人間でありたいと思います。心の傷を直接癒してあげることが出来なくても、子どもと共に「時間」に身をゆだねることのできる、そんな教師でありたいし、そんな親でありたいと思います。

子ども達にとって、めばえ幼稚園での「時間」がかけがえの無い、尊いものであることを祈っています。うれしいことも悲しいことも、全部含めて、これから先の人生を、大きく花開らかせるために必要な糧であって欲しいと思います。それが、めばえ幼稚園、全教職員の願いであります。

年長さん、少し早いけど、卒園おめでとう。小学校にいっても、自分、家族、友達、先生、そして自然を大切にしていって下さい。年中少さんは、進級おめでとう。これからも、めばえ幼稚園での生活を、心と体をいっぱいに使って、存分に味わっていって下さい。そして、うれしいことも悲しいことも、しっかりとその小さな心に刻み込んでいって下さい。