【 こどもの力 】 2009.4
ご入園、ご進級、誠におめでとうございます。春、新しい季節の始まりは良いですね。なんだか心が弾んできます。子どもたちの心もこれから始まる新しい生活に対する期待と不安でいっぱいのことと思います。しかし、新しく始まる幼稚園生活の楽しさを子ども自身がつかみとっていくためには、乗り越えなければならないハードルがあることも事実です。それは大好きなお母さん、お父さん、優しいおばあちゃん、おじいちゃんのいるお家からたった一人引き離されて、幼稚園という得体の知れないところにつれて行かれるのだから、当たり前といえば当たり前のことです。その時、子どもたちは「泣く」という行為を通して自分の心のバランスを取ろうとします。「泣く」必要があるから「泣く」のです。
僕が小学校低学年の頃、同じクラスに石山くんというとても恐ろしいいじめっ子がおりました。私はその石山くんに「いのうえ~」と呼ばれるだけで恐ろしくて、特に肉体的ないじめを受けたわけではないのですが、次第に学校に行くことが出来なくなってしまいました。いわゆる「不登校」です。そんな我が子を見て、父親は毎日古い映画館へ連れて行ってくれました。その映画館では、チャップリンの「ライムライト」とかドレミの歌の「サウンドオブミュージック」とかとても感動的な映画が上映されていて、僕はその映画を見て毎日涙をぽろぽろぽろぽろ流してたくさん泣きました。不思議なことに毎日たくさん泣いているとだんだん心が癒されてきて、少しずつ勇気が湧いてきました。一週間ほどでまた学校へ行くことができるようになったのです。
皆さんのお子さんはまだ産まれてからたったの3~5年しか生きていない小さな存在です。でも何か困難な状況に置かれた時、子どもは自分自身でその問題を乗り越えていく力を持っています。自分で考え工夫し努力して乗り越えていく力を持っているのです。だから、子どもの持っている力を信じましょう。でも、その力を使う時にどうしても心のバランスが取れなかったり、感情が先走ったりした時、子どもは泣きます。でもしっかり泣ききったなら、心のバランスを取り戻して、もう一度挑戦することが出来るのです。だからお子さんが泣いたなら、「今、この子には泣く必要があるんだ」と思い、しっかりと抱きとめながら泣かせきることを心がけてみてください。そして、子どもだけの力では、乗り切ることが出来ないと思える時は、大人が問題を全部取り除くのではなくて、その子自身が自分の力で乗り越えるくらいの手助けに留めておきましょう。子どもが傷つかないように、大人が全部問題を解決してしまっては、その子自身の力が育ちません。また、その反対に子どもの力だけに任せていては乗り越えることのできない問題もあります。だからこそ、常に子どもの内面を深く見つめながら、何がこの子にとって必要な援助なのかを考えていく必要があります。
過保護でも放任でも子どもは育っていきません。
入園当初は、「幼稚園に行きたくない」と言って、泣く子の姿が多く見られます。また、お子さんの口からは「なんで幼稚園に行かなくちゃいけないの?」「○○くんがいじめるから行きたくない」「お友達がいないからお家で遊びたい」など、ご家族の心をえぐるような言葉が出てくることもあります。そんな時は遠慮なさらずに教師にご相談ください。お手紙でも、電話でも結構です。お子さんの様子を共に語り合い、見守りながら、一緒に泣き笑いしながら、大切なお子さんを育てていきましょう。
教職員一同、精一杯、努力していく所存ですので、よろしくお願いいたします。