【大切にしたいこと】 2007.5
僕の3人目の子どもは、自宅の2階で産まれました。いわゆる「自宅出産」です。その時、上の子ども達2人は逃げずに、お母さんを助けてくれました。応援してくれました。命がけで新しい命を産み出そうとしているお母さんを小さいながら一生懸命に支えていました。しかし、そこに悲壮感は全くありませんでした。幸せでいっぱいでした。お母さんのお腹から赤ちゃんの頭が出てきた時、「はるちゃん、でてきた。はるちゃん、でてきた」と手を叩いて喜んでいました。「これがみんなに危険だと言われ、反対され続けていた自宅出産か」と思いました。危険どころか今まで味わったことないほどの幸福感でした。
お母さんのお腹の中にいた39週間の赤ちゃんの人生は、お母さんに守られ、お母さんと一体となって、何も心配せずにいることのできる幸せな日々でした。そんなある日、突然、陣痛が始まり、苦しい産道通過をへて、私たちの前に現れてくる赤ちゃん。あんなに幸せだったのに、何も心配せず守られていたのに、ここは一体どこだろう。そして、へその緒が切られます。「個」「孤独」「孤立」が発生する瞬間です。「おかあさん」「おかあさん」「おかあさん、どこなのー」泣きながら呼び続ける。「あっ、おかあさん」「おかあさんだ」この匂い、この声、この感触「間違いない」やっとお母さんに会えた。「もう大丈夫」。
今、地球上に生活している60数億人の大半は、今も変わらず自分の家で子どもを産んでいます。しかし先進国に住む人たちは、この40年の間に家で子どもを産むことを忘れてしまいました。人間が産まれて500万年間続けてきたことを、たったの40年で、しかも今現在も地球上の8割の人たちは、当たり前に自然な産み方をしているのに。安全性、効率性、科学性ということと引き換えに、「命の誕生」の喜びや尊さ。心の底から沸きあがってくる感動を捨ててしまいました。
産まれてきたばかりの赤ちゃんはお母さんを必死に探しています。「おかあさん」「おかあさん」「おかあさんどこー」産まれてきたその時、一番心細い時、一番怖い時、一番必要な人はそばにいない。そんな生まれ方って、本当に人間的でしょうか。あの幸せいっぱいだった「おかあさんのお腹」に帰りたい。おかあさんとしっかりとつながっていたあの時に帰りたい。人はそんな「子宮回帰願望」をもっていると言われています。
僕は「人はつながりを求めて生きている」と思っています。
自分とのつながり、家族とのつながり、友達とのつながり、自然とのつながり、命のつながり、あらゆるものとのつながりを求めていると思っています。だから、人生の基礎を作り上げる幼稚園時代に、しっかりと「自分」「人」「自然」とのつながりを感じて欲しいと願っています。
1.「人」とのつながり
「人と」のつながりを育てるためには、時につらい体験も必要です。
ケンカ、トラブル、仲間割れなどはつらい体験です。できればかわいい我が子には体験させたくないとお考えかもしれません。でもそんな体験をまったくしないで大きくなってしまったらどうでしょう。友達関係がこわれた時にその対処の仕方がわからなかったり、もっと深刻な場合には、人間関係そのものを作ることを嫌う人間になってしまうのではないかと心配です。
ケンカ、トラブル、仲間割れは確かにつらい体験です。でもその中で傷つき、苦しみ、心をえぐられるような体験を通して、その問題を自分の事として受け止め、立ち向かっていく力。問題を自分の事として乗り越えていく力が育っていくのではないでしょうか。傷ついた自分の心を立ち直らせていく力、こわれてしまった人間関係を修復する力はそのようなつらい経験を積んでいく中から得られていくのではないかと思うのです。その結果として、自分の大切さ、仲間の大切さ、友達と一緒に何かをやることの本当の楽しさを学んでいくのではないかと思います。
2.「自分」とのつながり
うれしい自分、かなしい自分、強い自分、弱い自分、いろんな自分に出会って欲しいと思います。心の中で描いている自分と実際の自分の間にあるギャップ。心の奥底にある良心と実際の行いとの間にある矛盾に向き合っていく中で、「自分とのつながり」を確かなものにしていって欲しいのです。つらい時、悲しい時、どうしても涙が止まらない時に、しっかりと支えてくれるお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、お兄ちゃん、お姉ちゃん、妹、弟、仲良しの友達、そして先生たち。いろんなつらい状況を我が事の様に感じてくれる人たち。「自分」を愛してくれる「人」との出会いが「自分」とのつながりを確かなものにしていくのだと思います。
3.「自然」とのつながり
幼稚園の裏山にある豊かな自然の中で、季節の移り変わりを体で感じながら過ごしていく日々。虫や草や木々たちの小さな息づかいも見逃さない感性を持った子どもにとって、裏山はかけがえのない遊び場であり、学びの場です。様々な動物との暮らしも欠くことのできないものです。ウサギやポニーがいつも生活のかたわらにいる生活は、人間だけが生きているのではないことを理屈ではなく、子ども達の腹の底にしっかりと植え付けてくれます。だから食べること、外で遊ぶこと、いろいろな生き物と接することはとっても大切なことです。それらは「自然」とのつながりを子ども達に教えてくれる貴重な体験なのです。
このように、めばえ幼稚園は「つながり」を大切にしています。そして「つながり」は「愛」です。少しずつでもいい、豊かにそして確実に子ども達の心に浸透していって欲しいと願いつつ、毎日の生活を営んでいます。
「自分」を愛する人、「人」を愛する人、「自然」を愛する人
そんな「世界を丸ごと愛する人」に育って欲しい。