【 型 】200512.19

 クリスマス祝会で年長さんの演じたイエス・キリストの降誕劇をご覧になっていかがでしたか。年長の親御さんはご自分のお子さんがセリフを言う時は、まるで自分自身が舞台に立っているかのように緊張したのではないでしょうか。「しっかり間違わずにできるか」「あがってセリフを忘れてしまわないか」我がことのように心配されたことでしょう。

実際に演じた子ども達はそれ以上に、大勢の視線が自分一人に集中した時の緊張感、今まで味わったことの無い不安な気持ちに襲われたはずです。

しかし、彼らは自分自身を信じ、一緒に演じている仲間達を信じて、立派に演じ切ることが出来ました。幼稚園に入園してきた頃のあどけない姿とは違い、自分の役割を立派に果たし、実に堂々とやり遂げました。

このキリスト降誕劇はストーリーやセリフ、役柄も全て決まっているので、その中で自分はどの役を演じるかを選ぶことしかできません。言ってみれば役は選ぶけれど、それ以降は一つの決まった型にはまっていくという体験なのです。

この一つの決まった型にはまるということについては、子どもの自主性や主体性を重んじる面からいうと反論もあろうかと思いますが、実は子ども自体はこの型にはまって何かに成り切る遊びが大好きです。その代表例はおままごとです。これは日々の暮らしの中で周りの人の動きや言葉を観察し、自分がその人物に成り切ることを楽しむ遊びです。観察して、模倣(まね)して、それを言葉や動きで表現する遊びなのです。

実は幼児期の子どもの最大の特徴はこの模倣(まね)にあります。子どもは周りにある全ての人や物を模倣(まね)して自分のものにしていくのです。

ですから子どもに何かを伝えたい時は、口でやかましく言うよりも、実際に大人がやってみせることが大切です。言葉ではなく態度や行動で示すのです。逆に全てを子ども任せにして、子どもの言う通りにしてしまうのも、子どもの成長特性である模倣(まね)を無視した関わり方です。このような放任の環境で育てられると自分の中に確固たる価値観を築けないまま無秩序な大人に成長してしまいます。

子どもは大人のする行動を鋭く観察し、模倣(まね)することでやがて自分の動きとして定着していきます。周りの大人の生活パターンを一つの決まった型として模倣(まね)して自分の生活パターンにしていくのです。ですから子どもの周りにいる私たち大人が日々の生活の中でどのような言葉や態度を示しているかがとても重要になってきます。いやその前に言葉や態度に表れる基になっている心の状態や精神性こそが問われているのです。

子どもは単に外側に表れる言葉や態度だけでなく、その内側にある心の状態やその人の精神性までも鋭く読み取り、模倣(まね)するからです。

キリスト降誕劇を演じた子ども達は、一つの決まった型にはまり、その役に成り切ることでその人物の感情やその場の状況をよりリアルに感じとることができたことでしょう。また、その役に徹し最後までやり遂げた達成感も子どもの心を一回り成長させてくれる大切な要素です。

このように、ある一つの決まった型にはまり、それをやり遂げる体験は子どもの成長特性に沿った大切なものなのです。